吉田尚記

「NEO FANTASIA」アルバムレビュー(総括)

今回のアルバムのコンセプトは「遊園地」と聞いて、こ、これは大勝負だ!! と思わざるを得ませんでした。例えばジェットコースターに乗った時、あんまり楽しくなかったとして「えー、このジェットコースターは怒りを表現してまして…!」なんて言い訳は出来ないわけで、解釈抜きで、リスナーの感覚を楽しませきらなくちゃいけない、一切の言い訳ができない勝負を挑む、ってことじゃないですか。
で、その勝負の結果!
もう、お分かりでしょう。大・勝・利!!!!
すごいですわ……!プロ、エンターテナー……!!
シルク・ドゥ・ソレイユとか見てると思うのですが、すごいエンターテイメント、と言うのは、「とんでもない身体能力」と「ちょっと狂気に近いやる気」を両方持った人にしか出来ないもの。モチベーションはもちろん、あの「歌声」をもっている茅原さんじゃないと出来ない、そんな超絶ボーカルとそれについていくクリエイティブの極みを味合わされてしまいました!!もー、極楽!!

01: The immortal kingdom

テーマパークに入った瞬間に感じる、画面では体験できない、360度包まれるあの感覚。茅原さんの声のあの包容力!!いきなりふわーっと、外の世界は思い出せない場所に連れて行かれてしまう曲!!

02: TREASURE WORLD

そうそう!歌って、「歌え!!」と命令形で言われるもんじゃなくて、楽しそうに歌ってる人がいるから、一緒に歌い出したくなってしまう、ってものですよねー。「うんめい」って言ってるところが「ぅふんめい」と、ちょっと空気を含んだような発音なところが、ワタシ的にはクラっと来るポイント。

03: SELF PRODUCER

キャッチー!!!文句なく楽しい!!でも、「思い通りに恋しよう」というのは、かなーり、攻め攻めな価値観。。「片思いも両思いも」と、そうそう思い通りに行かないことを、テーマパークといえば恋人とくるものでしょうが、ここまで来て、思い通りにしたくないわけ無いでしょ!と楽しまされているうちに、覚悟を決めさせられちゃってる気が…!

04: TOON→GO→ROUND!

ここここ、これだから声優さんのアルバムを聞くのはやめられない!! ここまで明らかに生身で情感たっぷりに楽しませてくれていた人が、今度はデジデジした未来的な存在になりきっていたずらっぽく聞かせてくれる!このなりきりは、普通のシンガーの曲では、なかなか……!声優さんの演技バリエーション力、あってこそ!!

05: 1st STORY

今まではアトラクションの楽しませてくれるキャストだった茅原さんが、突然、隣の席に座ってくれた錯覚が……!いや、錯覚なのは間違いないんですけど、きいてると、そういうふうにしか、思えないんですよ。妄想家で、すいません……!!

06: endless voyage

エンターテイメントの基本は、緊張と緩和。いままで全力で楽しませてくれていた人が、突然、ニコニコした楽しさから、ちょっとした、緊張感をもってこちらに迫ってくる。この辺で、ただ楽しい一辺倒の子供っぽいテーマパークじゃなかったことに気付かされます。アトラクションで武器の剣や銃を渡された時に感じるあの高揚感が……!そして戦い、勝てるのか?!

07: 真白き城の物語

さっきの戦いは、完全勝利ではなく、痛み分けか、もしくは、怪我はしたけど、なんとか生き残った、そんな戦いだったのではないでしょうか……?そこから命からがら辿り着いた場所で、知恵ある存在、長老か現地の一族か。一流のエンターテイメントは、楽しさとともに、知恵もくれますよね。聞いていると頭が良くなった気が。

08: Celestial Diva

今度は、オリエンタル!さっきの戦いで何もかも失っちゃったところに、黒い髪の女神が救いを投げかけて、魔法を授けてくれますが、でもその際、一緒に覚悟も固めねばならない。あいある修行と、決意があったうえでの旅立ちの曲。

09: Lonely Doll

ほかの場所が賑やかなときほど、一人になった時の孤独感は、際立つもの。「ソロ」を強く意識させる曲です。アナウンサー的なマニアックなボーカル音の聞き分けをすると、「あの夢をみていた」の「た」の部分、あえて表記すると「たはぁ」とでも書くべき、ひらがなひと文字では表現できない玄妙な音になってます。ほかにも母音が「a」「e」の音が、茅原さんにしか出来ない、口腔内おそらく2箇所以上共鳴してる、ものすごく倍音感のつよい、心地良い音色が充満してるので、寂しいだけじゃない曲なんですよねぇ……!

10: この世界は僕らを待っていた

これ!!これーー!!!!ガルガンティアで聞いた時から、この曲、このシーズンのアニソンでダントツに趣味で聞いてた曲でした!!明るさ、元気さ、開放感!!こんなにパワーがあるのに、まったく押し付けがましくない、そして、空を駆け巡る以外のことはもう出来ない!一番言われたい言葉じゃないですか、「この世界は僕らを待っていた」って……!大好き!!

11: ZONE//ALONE

さぁ、戦いのスタートです!わけも分からず戦いに巻き込まれたのとも違います。自ら意味もない闘争を求めたこととも違います。使命感と、ここまでで培った使命感と能力!それらを全部引っくるめて、正しい戦いにのぞむ際に湧き出る全力!!さーー、いくぞーーー!!

12: 境界の彼方

激しい戦いのさなかに、ふっと見えてくる、あれ?いままでわかっていなかったけど、これか、こういうことか!!とより、力が湧いてくる。その瞬間が、ここの冒頭15秒に凝縮されています!!  あと、ポップロック、UNISON SQUARE GARDEN→堂島孝平、という流れの音楽が大好きな身としての驚きは、なんとこの曲のピアノ、シュローダーヘッズの渡辺シュンスケさんであること!!!!うほー、端正なようでいて、ライブではピアノから飛び降りちゃったりするあの人のヤバさも、満ち満ちています!!

13: NEO FANTASIA

そして戦いの末に現れたのは、同じ目線の存在ではなく、超越した見上げるような存在。ここで歌っている主体は、人ではないのはもちろん、もう、世界そのもの。茅原実里さんの神々しさ、女神感、全開!!!

14: Neverending Dream

もう、何もいうことはないでしょう。テーマパーク、というテーマで作られていること、テーマパークに遊びに来ていたことすら、夢中にさせられて、忘れていました。閉園ギリギリになっていることすら、3分も経ってボーカルが登場するまで気が付かないほど。アナウンサーでは絶対に出来ない、曲線で美しく彩るような最後の「会いにゆくよ、待っててね」。完璧、とは、こういうことを言うのでしょう!

クロスレビュアー

>> 澄川龍一
アニメ音楽誌「リスアニ!」副編集長。編集や執筆のほか、イベント司会など行う。
>> 冨田明宏
音楽評論家、ラジオMC。アニメ誌や音楽誌での執筆や連載、『リスアニ!』の 企画/メイン・ライティングを担当。
>> 西原史顕
アニメ音楽誌「リスアニ!」編集長。同誌からマルチ展開したLIVEやWEB、TV番 組などの制作にも携わる。
>> 吉田尚記
『ミュ~コミ+プラス』AM1242(月)~(木)24:00-24:53
パーソナリティ、第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。
>> 齋藤光二
アニメロサマーライブ・ジェネラルプロデューサー。通称「齋藤P」。