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■澄川龍一

本編ラスト“truth gift”の幕引きのようなストリングスがスピーカーから静かに消えていく。それからしばらく経ってもなお、震えが止まらない。シーンの性質上、楽曲単位で語られがちだったアニメ/声優音楽において、これほどアルバムとしての高い完成度を叩きつけられたのはある種ショックだったのだ。硬軟自在に、幾重にも張り巡らされたサウンド、そこに一本芯の通ったストリングスというファクター……と、サウンドとしても全編に渡ってこの上ないクォリティーに仕上がっている。そして畑亜貴、こだまさおりが紡ぐ歌詞を触媒にして怒り、哀しみ、喜び、そして母性すら感じさせるさまざまな感情を内在させ、それを楽曲ごとに放出する茅原のヴォーカルは、冷たいデジタルなサウンドを黄金に換える。つまりこれは、〈温かい血の通ったトランス〉だ。今後シーンは確実に〈『Contact』以降〉として語られるであろうし、その中心に必ずや茅原実里は君臨し続けるであろう。ぼくらはとてつもないモンスター・アルバムと出逢ってしまった。しかしお楽しみは、これからなのだ。

■冨田明宏

助走距離が長ければ長いほど、より遠くへ飛べるとはよく言ったものだ。しかも本人に「今すぐ飛びたい!」という強い意志、想いがあるのならば、その抑圧されていたエネルギーは、地面を蹴る為の両足に、大きく振り抜く両腕に、想像を超えた力を宿らせる。
茅原実里が長らく押さえ込んできた“歌”への想いは、「純白サンクチュアリィ」、「君がくれたあの日」として、一気に解き放たれた。そして、超待望のNewアルバムである『Contact』は、そんな彼女がまだ内側に秘めている、新たな可能性への挑戦だったのではないか。デジタル・サウンドならではのクールネスと、生楽器の甘美なエモーション。その2つが複雑に絡み合いながら、多彩なメロディを生み出し、畳み掛けるように旋律を紡ぐ。何しろクリエイターは、エレメンツ・ガーデン菊田大介に、畑亜貴、大久保薫、中西亮輔らである。1曲1曲、全てに強い個性があるのは当り前であり、生半可な歌い手では潰れてしまうだろう。
歌えないことの苦しみを知っている。それゆえに、誰よりも歌う喜びを知っている。そんな歌い手として、表現者として、茅原実里はアルバム『Contact』に挑んだ。詳しい解説は各曲レビューに譲るが、率直な感想として、我々は本作で始めて、アーティスト茅原実里に、ようやく『Contact』=“触れる”事が出来たのだと思う。
もしかしたら、このシーンに何か起きるのかもしれない。微塵の揺らぎも見せず、何者でもない、自分の声で歌いきった彼女を見ていると、そんないい予感しか沸いてこないのだ。

■仲上佳克

感無量、といえば今のこの気持ちを的確に表現できるのかもしれません。茅原実里という人が持っている人間的な魅力、演技者としての表情の豊かさ、そして何より歌い手としての技量、そのすべてがこの一枚には詰まっています。ここまでのものを作り上げたクリエイター陣とスタッフの皆さんには、心から敬意を表します。そして、茅原さんには「おめでとう」と言ってあげたい。「アルバムが完成するのを誰よりも私が一番楽しみにしています」と、以前に雑誌のインタビューで語ってくれた言葉が、私の脳裏に甦ります。たぶん、茅原さん本人にとっても、期待を上回る完成度となったことでしょう。果たして次に会う時に、彼女はどんな笑顔を私たちに見せてくれるのでしょうか? いささか気の早い話ではありますが、このアルバムを引っさげてのライブが、今から待ち遠しいところです。

■永田寛哲

2007年より音楽活動を再開した茅原実里が、ついに待望の1stフルアルバム『Contact』を完成させた。先行シングル「純白サンクチュアリィ」「君がくれたあの日」の2曲を含む全12曲。シングル曲以外は全て今回のアルバムのために新しく書き下ろされた新曲だ。メインとなる作家は、シングル2曲も手がけた畑亜貴(作詞)と菊田大介(作曲・編曲)のコンビ。鮮烈な印象を与える打ち込みトランス・ビートと生ストリングスが融合したバックトラック、豊かな情景を喚起させる歌詞、そして茅原の美しくも透明感のある歌声。これらの要素が重なり合うことによって、魅力あふれる茅原実里サウンドが形成されているのだ。あくまでコアとなっているのは“シンフォニック・トランス”ラインだが、もちろんそれだけでは終わらない。Tetsh、俊龍、虹音といった新規作家陣を招くことで、ハウス・サウンドやクラブ・ミュージック・トラックなど、意外性のある楽曲も収録され、それはまるで12色に煌めく宝石のよう。そして真に驚くべきは、それらの楽曲群を真正面から受け止め、見事に輝かせている歌手・茅原実里の実力だ。今ここに、まごうかたなき名盤がここに完成した。彼女の音楽活動再開後のまさに集大成となった、本アルバム『Contact』。あとはリスナーの元へこの作品が届けられ、タイトルの如く「触れ合い」「接触」が行われるのを待つばかりである。

■前田久

茅原実里はセカイを変える。

「雪、無音、窓辺にて。」を聴いた瞬間に生まれたそんな?期待?が、「純白サンクチュアリィ」を聴いた瞬間に?予感?になり、「君がくれたあの日」を聴いた瞬間には?確信?へと変わっていた。

そして、予想をはるかに上回る形で、目の前に存在しているアルバム。
僕は今、ひとりの音楽を愛するものとして、圧倒的な幸福感に包まれている。

今、茅原と近しいフィールドにいるアーティストたちは、激烈なトランス・サウンド、シンフォニックなアプローチ、大規模なライブ会場に対応したアリーナ・ロックなどといった、様々な潮流を生み出している。
菊田大介、大久保薫らをはじめとする錚々たるメンバーが作り上げた、人工美の極致のようなサウンドに、畑亜貴とこだまさおりの、遠い異世界の情景と、等身大の繊細な感情を併記した叙情的な歌詞、そして、どこまでも透明でありながら、けして無機質にはならない茅原の歌声……このアルバムは、それらの潮流をすべて受け止めながら、新たな、そして巨大な潮流を生み出そうとしているように思えてならない。 
それぐらいのことは言える。それだけのおそるべき完成度である。

できる限り多くのひとに、このアルバムを聴いてもらいたい。
ファンとしてではなく、音楽を愛するもののひとりとして、切実に。

■水上じろう

どれだけ「これはいい」「素晴らしい」と書いても
その“良さ”は読む人には伝わらないと思っています。
面白いと思うものは、“その人自身”がそこからみえてくるもの。
そんなようなことを大昔に、ロック雑誌か何かで読んだ気がしますが。

絵画だって、音楽だって、そう。
ピカソの絵には、ピカソという人物そのものが表れてるように思います。
ピカソがどんな人か知らなくても、
大切なことは作品のなかに全部あるのだと思います。

おなじように、
この『Contact』というアルバムには、“茅原実里”という人間が表れてる。
それも奇跡的なぐらい、くっきりと。
茅原さんはもちろん、この作品に関わったすべての人に心から敬意を表します。

■渡邊純也

じつに透明性の高いアルバムができあがった。
それは無色透明なのではなく可視できるほどの淡い色彩をともなっている。
まるでフィルターをかけたように世界が茅原実里の歌声によって色づいて見える。
彩りは全12色。
今回、アルバムをレビューするにあたって曲をプレーヤーに入れて聴きこんだ。
どんな時でも、どんな場所でも。
例えば、仕事に向かう地下鉄の中で。
例えば、本を読むために入ったカフェで。
例えば、たくさんの他人がすれ違う渋谷のスクランブル交差点で。
そして気づいた。「人との触れ合いはドラマなのだと」。
コンタクトに収録された曲は、特定の主人公がいるわけではない。
それは茅原実里本人かもしれないし、リスナーのアナタかもしれない。
曲に触れることで、新たな自分を発見して心躍らせたり、
孤独な自分を捕まえてみたり、今まで見えなかった繋がりを意識したり。
誰しもがここでは主人公であり、カタルシスを感じとることができる。
「素」の自分と向き合わせてくれるピュアネスな音。
10月24日、ニューアルバム『Contact』にコンタクトしてみて欲しい。
手にしたその日が、あなたにとってのアニヴァーサリーになるから。

クロスレビュアー

アニソンマガジン(洋泉社)などで執筆中の音楽/アニメ・ライター。

80年生の音楽ライター。アニソンマガジンの企画/メイン・ライターを務める。その他執筆媒体は、CDジャーナル、bounce、クッキーシーン、アニカンR-music等など。音楽ガイドブック制作によく参加したり、BGM監修やコンピの監修も手掛けたり。

フリーライター。各アニメ誌・声優誌等にて幅広く活動中。アニメNewtypeチャンネル内の動画インタビュー番組gammyの必萌仕事人ではメインパーソナリティーを務める。

編集プロダクション・ユービック代表。アニメソング専門誌アニソンマガジン編集長。

82年生。ライター。通称「前Q」。ライトノベル、アニメ、アニソンなどオタク周辺事象について広く執筆中。主な執筆媒体にオトナアニメ、アニソンマガジン(洋泉社)、まんたんブロード(毎日新聞)、ニュータイプ(角川書店)など。

フリー編集者、ライター。B Street Band所属。千葉県市川市出身。

構成作家。涼宮ハルヒの憂鬱 SOS団ラジオ支部、らっきー☆ちゃんねる、らっきー☆ちゃんねる 陵桜学園放課後の机、radio minorythm etc.