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『Contact』アルバムレビュー(総括)

感無量、といえば今のこの気持ちを的確に表現できるのかもしれません。茅原実里という人が持っている人間的な魅力、演技者としての表情の豊かさ、そして何より歌い手としての技量、そのすべてがこの一枚には詰まっています。ここまでのものを作り上げたクリエイター陣とスタッフの皆さんには、心から敬意を表します。そして、茅原さんには「おめでとう」と言ってあげたい。「アルバムが完成するのを誰よりも私が一番楽しみにしています」と、以前に雑誌のインタビューで語ってくれた言葉が、私の脳裏に甦ります。たぶん、茅原さん本人にとっても、期待を上回る完成度となったことでしょう。果たして次に会う時に、彼女はどんな笑顔を私たちに見せてくれるのでしょうか? いささか気の早い話ではありますが、このアルバムを引っさげてのライブが、今から待ち遠しいところです。

1.Contact

茅原さんの魅力がその親しみやすいキャラクターにあるのは言うまでもないことで、接触・触れ合うなどの意味を込めた「Contact」というアルバムタイトルからも彼女の温かい人柄が伝わってきます。しかし、その表題曲であるこちらの曲は、むしろ無機質に近い雰囲気で全編が彩られています。「小宇宙」「星雲」などの言葉からして、異星人とのファーストコンタクトをイメージしているのでしょうか? 予想を超えた非日常的な幕開けにより、我々の耳と心は普段暮らしている日常から抜け出して、一気にこのアルバムの世界へとダイブしていくのです。そこにいる茅原さんは、普段の彼女とはまたちょっと違う、輝かしいオーラを身に纏っています。このアルバムを聴くことは、もしかしたら彼女の内面を紐解くことになるのかもしれません。そんな不思議な旅へと我々を誘う役割を持った曲が、この「Contact」なのでしょう。

2.詩人の旅

人の一生は旅に似ています。すなわち、ここにいう「詩人」とは、我々ひとりひとりを指す言葉に他なりません。あなたにも、私にもそれぞれの人生があり、その旅の途中でこうして1枚のアルバム、ひとつの楽曲を通じて思いが結ばれたことはまさに奇跡なんですよね。その旅を見守ってくれている茅原さんが我々に投げかけてくれる励ましの言葉は、ただ優しいだけはありません。痛みを感じて、なおそれを乗り越えて行けという呼びかけは優しくもあり、厳しくもあり、我々を奮い立てるのに充分すぎる力を持っています。この歌の主人公も決して傍観者ではなく、自分もまた同じ旅人として、迷いや悩みを抱えているようです。だからこそ彼女の言葉には説得力があるのでしょう。彼女が強くなれるのであれば、きっと我々も強くなれるはず。これからも一歩ずつ足を踏みしめて、長い旅路を歩いていきましょう。

3.ふたりのリフレクション

「ふたり」という単語には、人知が及ばぬほどの魔力が潜んでいるように思います。どうしようもなく切なくもなるし、ほんわかした気分にもなれるし、この三文字から受ける印象は人それぞれでしょう。感情だけでなく「ふたり」と聞いて想像する相手もまた、人によって変わってきますよね。あなたがこの曲を聴いて思い浮かべるのは誰の顔でしょうか? その人と一緒にこの曲を聴くことができたら、きっと今以上に幸せな気持ちになれるはずです。ところで、「わたしの色」「ふたりの色」と歌うときに、一体どんな色をイメージして歌ったのか気になってしまったのは、インタビュアーとしての職業病でしょうか? 何かの機会があったら、茅原さんに聞いてみたいところです。

4.純白サンクチュアリィ

この曲については語りたいことが多すぎます。もはや説明するまでもありませんが、歌手活動再開第1弾となったシングルで、多くの方に“歌手・茅原実里”の魅力を改めて知ってもらえた曲でもあります。この歌に込められた茅原さんの思いはあまりにも大きすぎて、私ひとりの小さな心では受け止めることができません。聴くたびに、何か胸が押しつぶされそうな感覚になります。もちろん、それは決して苦痛ではありません。幸せすぎてたまらない感覚、といえばわかっていただけるでしょうか? 歌というものに対して常に真摯に向き合っている茅原さん。海よりも深く、宇宙よりも広大な彼女の情熱をこの曲から感じとってもらえたら、私の書きたかったこともきっと理解していただけるはずです。

5.Dears 〜ゆるやかな奇跡〜

タイトル通り、ゆるやかなテンポに包まれた1曲。「純白サンクチュアリィ」で昂ぶりすぎた胸の鼓動をそっと静めてくれるかのようです。でも、個人的にこういったスローバラードは“弱点”なので、5曲目に来られると結構大変です。何が大変って、ついつい泣いてしまうから。歌詞のひと言ひと言が、心にじーんと沁みてくるんですよね。もう、こうやって原稿を書いていても涙がこぼれてきそうですよ。であれば、ここはひとつ我慢しないで素直な気持ちになって、優しい歌声に身を任せて思いきり涙を流すのが、この曲にふさわしい聴き方なのでしょうね。心から泣けるって、幸せなことですよ。

6.Cynthia

ゆるやかな前曲から一転して、ダンサブルなナンバーに。茅原さんの曲としても、今まであまりなかったタイプかもしれません。軽快なリズムに乗せた歌声は、大人っぽく落ち着いていて、クールでもあります。この歌のキーワードは月、もしくはmoon。古来から人は月に対して様々な思いを抱いてきましたが、現代の都会で暮らしていると夜空の月を見上げることさえ忘れそうになります。そんな月影に照らされて出会う恋人たちは、どんなドラマを演じているのでしょうか? ロマンティックな気分に浸れる1曲です。

7.sleeping terror

茅原さんの歌声は「クリスタルボイス」と形容されています。この曲は、アルバム全体を通してもそのクリスタルの純度が最も高い1曲だといえるのではないでしょうか。歌詞と楽曲と歌声とが一体となって作り上げられた幻想的な世界は、まだ人の手が触れられていない聖域のようにも感じられます。だからこそ、痛い。だからこそ、せつない。これほどまでに研ぎ澄まされた茅原さんの歌声を、私は今まで聴いたことがなかったかもしれません。表現者としての彼女の成長がうかがえるという意味でも、聴き逃せない名曲です。

8.too late? not late…

クリスタルボイスの究極まで辿り着いた後には、意外に思えるほどにストレートなラブソングの登場となりました。まっすぐに、熱く、思いのたけをこちらへとぶつけてきています。この歌声で「とびこんでもいいですか?」と聞かれたら、それはもう二つ返事で「とびこんでこい!」と答えてしまいますよね。とはいえ、この歌の主人公が何らかの事情を抱えていて、その上で「とびこんでもいいの?」と言っているのであろうことは、想像するに難くありません。それでも我々は、彼女をしっかりと抱きしめてあげられるでしょうか? それだけ器の大きい人間になりたいものですね。いえ、きっとなれるはずです。何事にも、遅すぎるということはないのですから。

9.夏を忘れたら

秋発売のアルバムにはぴったりの季節感を持った1曲。夏の終わりの感傷を歌った歌詞は、幅広い層の人たちからの共感を得られるのではないでしょうか。今の季節、どうして人はこんなにもセンチメンタルになってしまうんでしょうね? 今年の夏は特に暑くて、誰もが「早く涼しくなればいいのに」と思ったはずなのに、いざ秋が来ると途端に寂しくなる。それだけ夏という季節が、我々にとって特別なものだということなのでしょう。去ってしまった、二度と戻らない今年の夏に思いをはせながら、じっくりと聴いてみてください。

10.mezzo forte

いよいよこのアルバムも終盤に近づいてまいりました。まったく勝手な見解ながら、アルバムの全体のテーマとしては、生きる上での強さ、弱さとは何だろう? といったことがあるように私は思っています(違っていたらごめんなさい)。そういう意味でいえば、「mezzo forte」というタイトルを持ったこの曲は、ここまでの曲で繰り返し書かれてきたテーマをひとつに纏める、重要な役割を担っているのではないでしょうか? その結論は、聴けば「なるほど!」と誰もが納得できるはず。茅原さんに導かれてきた「Contact」の旅とも、そろそろお別れです。

11.君がくれたあの日

セカンドシングルは「純白サンクチュアリィ」と並ぶ、いや、もしかしたらそれ以上かもしれない大作となりました。アルバムの終盤を飾るのに、これ程ふさわしい曲はないともいえます。もはや余計な言葉は必要ないでしょう。茅原さんにとっても、ファンひとりひとりにとっても、とても大切な宝物となったこの曲を聴けば、きっと胸が熱くなるはず。「君がくれたあの日」がこの位置に来たことにより、「Contact」は最高のクライマックスを迎えられました。

12.truth gift

1曲目の「Contact」が現実世界からアルバムの世界への入り口だとしたら、再び現実へと戻る出口となるのがこの曲です。あまりにもありふれた表現で恐縮ですが、きっと茅原さんから応援してくれる皆さんへの感謝の気持ちが、この曲には込められているのでしょう。これまた月並みな表現ですけど、等身大の茅原実里がこの曲では表現されている気がします。私としても、いろいろと思い起こすことがあり、聴いていて目頭が熱くなりました。皆さんの心にも、きっと何かしら響くものがあるはずです。聴き終わった後の余韻も、また心地がいいんですよね。このまま深い眠りに落ちていければ、それ以上に幸せなことはないでしょう。この幸福感は、アルバムを最後まで聴いた人だけが得られる特権です。

クロスレビュアー

アニソンマガジン(洋泉社)などで執筆中の音楽/アニメ・ライター。

80年生の音楽ライター。アニソンマガジンの企画/メイン・ライターを務める。その他執筆媒体は、CDジャーナル、bounce、クッキーシーン、アニカンR-music等など。音楽ガイドブック制作によく参加したり、BGM監修やコンピの監修も手掛けたり。

フリーライター。各アニメ誌・声優誌等にて幅広く活動中。アニメNewtypeチャンネル内の動画インタビュー番組gammyの必萌仕事人ではメインパーソナリティーを務める。

編集プロダクション・ユービック代表。アニメソング専門誌アニソンマガジン編集長。

82年生。ライター。通称「前Q」。ライトノベル、アニメ、アニソンなどオタク周辺事象について広く執筆中。主な執筆媒体にオトナアニメ、アニソンマガジン(洋泉社)、まんたんブロード(毎日新聞)、ニュータイプ(角川書店)など。

フリー編集者、ライター。B Street Band所属。千葉県市川市出身。

構成作家。涼宮ハルヒの憂鬱 SOS団ラジオ支部、らっきー☆ちゃんねる、らっきー☆ちゃんねる 陵桜学園放課後の机、radio minorythm etc.