最新のシングルにして、茅原実里／菊田大介スタイルの最新のフォーミュラだ。「詩人の旅」「君がくれたあの日」などと同じくストリングスと高速ビートが織り成すアグレッションという錬金術をここでまた見せつけられた感があるが、無機質な序盤からサビで一気に色がつくという感情の大きなうねりの衝撃は過去最大のもの。激しくもあり、そこに気品をしっかり残すことができるのは彼女だけだと再確認させられる。まさしく茅原実里スタイルのアンセム、その究極がここにある。

自身初となるアニメ主題歌であり、茅原史上最も激しさを強調した曲でもある。アルバム・バージョンとしてイントロに新たなアレンジが加えられており、シングルとは違うドラマ性が盛り込まれている。ハイスピードで駆け抜けるグルーヴと、饒舌にストーリーを紡ぐストリングスの洪水、そして迷いく突き進む凛々しく苛烈な茅原の歌声に、なすすべもなく飲み込まれてしまう。多国籍なムードも導入されたアレンジも白眉。こんな曲聴いたことない！　と興奮せずにはいられなかった、驚きに溢れた楽曲だ。

TVアニメ『喰霊-零-』のOPテーマとしてリリースされた茅原のシングルが、本アルバムでは「-at next nest-」という別バージョンで収録。茅原の音楽世界のとある極点を示したかのような激しさを見せる楽曲だが、アルバムの中の一曲としても違和感なく、必要なピースのように収まっている印象を受けた。アルバムコンセプトの深さが垣間見える瞬間だ。

　5thシングルのリミックスバージョン。アルバム独自の長大なイントロが付されているのだが、これがまた震えるほどカッコいい。序盤では禁欲的に封印されていたストリングスがサビを迎えて怒涛の勢いで解放される瞬間には、ドーパミンが溢れだすのを万人がとどめられないはずだ。また、メインのボーカルラインをすぐ後から追いかけていくようなコーラスパートや、間奏導入部のクワイア的なコーラスなど、コーラスの特徴的な使用も印象に残る。

先行でリリースされたシングルバージョンとは異なり、
新たにイントロが追加されたアルバム収録バージョン。
ＴＶアニメ『喰霊−零−』のテーマソングとして、
決して戻りえぬからこそ儚い思い出として浄化すべきだった日々を
運命によって汚されることになってしまった姉妹愛を歌った叙情曲。
《信じたいよ　私たち孤独じゃない》というリリックには
運命に爪を立て悲しみを湛えているような背徳を感じえずにはいられない。
美しくさえ映し出されるその戦慄と旋律。
ぞくぞくと背筋が震えるような耽美的なメロディがこれ以上ない形で邂逅する。
アウトロに差し掛かる頃には、失楽園の住人になっていることだろう。